――比べない人に、豊かさは静かに集まる――
昔むかし、ある山里に、顔に大きなこぶのあるおじいさんが住んでいました。
おじいさんは、こぶのことを少し気にしてはいましたが、誰かをうらやんだり、文句を言ったりすることはありませんでした。山へ柴刈りに行き、畑を耕し、日が暮れたら静かに家へ帰る。そんな穏やかな毎日を送っていました。
ある日、おじいさんが山で仕事をしていると、突然雨が降り出します。
あわてて雨宿りを探し、近くの大きな木のうろへ入りました。
すると、どこからともなく
ドンドン、カッカッ、ドンドン。
太鼓や笛の音が聞こえてきます。
やがて、鬼たちが集まり、楽しそうに踊り始めました。
普通なら怖くて震え上がるところですが、おじいさんは違いました。
「まあ、楽しそうだなあ」
そう思ったおじいさんは、思わず木のうろから飛び出し、鬼たちの前で踊り始めたのです。
下手くそだけれど、心から楽しそうな踊り。
鬼たちは大喜びしました。
「おもしろいじいさんだ!」
「また来てくれ!」
そう言って、帰り際にこう言います。
「明日も来るなら、約束のしるしを置いていけ」
鬼たちは、おじいさんの顔のこぶを取り、預かりものとして持っていきました。
翌朝。
おじいさんが目を覚ますと――
長年連れ添ったこぶが、きれいさっぱり無くなっていたのです。
おじいさんは驚きましたが、すぐにこう思いました。
「まあ、ありがたいことだなあ」
特別に自慢することもなく、いつも通りの生活を続けました。
欲は「まね」から生まれる
さて、この話には続きがあります。
同じ村に、もう一人、顔にこぶのあるおじいさんがいました。
このおじいさんは、先のおじいさんの話を聞くと、こう思います。
「自分も行けば、こぶが取れるに違いない」
山へ行き、同じように雨宿りをし、鬼たちの宴に出くわします。
しかし――
このおじいさんは、楽しむためではなく、
得をするために踊りました。
鬼の顔色をうかがい、うまくやろうとし、
「こぶを取ってもらう」ことしか頭にありません。
鬼たちは次第にしらけていきます。
「なんだか、つまらないな」
そして鬼たちは言いました。
「昨日の約束の品を返してやる」
そう言って――
このおじいさんの顔に、
もう一つのこぶを付けてしまいました。
こぶは二つになり、おじいさんは肩を落として帰っていきました。
こぶとりじいさんが教えてくれる「お金の真理」
この昔話は、
うまくやった人が得をする話
ではありません。
本当のテーマは、
比べた瞬間に、豊かさは逃げる
ということです。
最初のおじいさんは、
- 誰かと比べていない
- 何かを取りに行っていない
- ただ、その場を楽しんでいた
結果として、
あとから「得」がついてきました。
一方、二人目のおじいさんは、
- 人の幸運を聞いて動いた
- 同じことをすれば得られると思った
- 損得だけで行動した
その結果、
不自然な流れが生まれました。
お金も、まったく同じです
お金の悩みの多くは、ここから始まります。
- あの人はうまくいっている
- 自分も同じことをすれば稼げるはず
- 置いていかれたくない
この「比べる気持ち」が強くなるほど、
お金は重たく、苦しいものになります。
逆に、
- 今の自分に合うペース
- 無理のない使い方
- 小さな満足を味わう感覚
を大切にしている人のところには、
不思議とお金が長く残ります。
それは、運でも才能でもありません。
「自然な流れ」を壊していないからです。
得ようとしない人が、結果的に得をする
最初のおじいさんは、
「こぶを取ってもらおう」
とは一度も考えていませんでした。
ただ、
「今ここを楽しむ」
それだけでした。
お金も同じです。
- 焦って増やそうとしない
- 他人の成功を追いかけすぎない
- 自分の暮らしに合った金額を知る
この感覚を持つと、
なぜか困らなくなる
という状態に入ります。
今日だけの話
もし今、
「あの人みたいになりたい」
「同じことをすれば稼げるはず」
そう思って苦しくなっているなら、
少しだけ立ち止まってみてください。
あなたにとっての「ちょうどいい」は、
誰かの成功例の中にはありません。
比べない。
奪わない。
無理をしない。
そうやって過ごす毎日の先に、
あなた専用の豊かさは、ちゃんと用意されています。
それが、
こぶとりじいさんが、
そっと教えてくれていることなのです。


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